浄土宗と浄土真宗

日本にはさまざまな宗派がありますが、中でも浄土宗と浄土真宗はよく似ており、違いが分からないという人は多いようです。

また、浄土真宗のお葬式では、他の宗派とは違う点がいくつもあります。いざという時に失敗してしまわないよう、浄土宗と浄土真宗の違いやお葬式でのマナーをご紹介します。

浄土宗とは

浄土宗は、法然上人(ほうねんしょうにん、別名「源空(げんくう)」)が宗祖となって1175年頃に開かれた宗派です。
本尊は阿弥陀如来で、「南無阿弥陀仏」を称えながら安らかな日々を送り、極楽浄土への往生を祈るという教えが元となっています。

浄土真宗とは

一方、浄土真宗は親鸞聖人(しんらんしょうにん)が宗祖となって1224年頃に浄土宗から文派して開かれた宗派です。
もともと親鸞聖人は法然上人の弟子でした。本尊は阿弥陀如来と浄土宗と同じ。「南無阿弥陀仏」と唱えて極楽浄土への往生を祈るという基本的な考えも同じです。

浄土宗と浄土真宗の違い

このように見ると、浄土宗と浄土真宗は非常によく似ていることが分かります。では、どのような点に違いがあるのでしょうか。

●念仏のとらえ方の違い

この2つの宗派の大きな違いは、念仏に対する考え方にあります。浄土真宗は浄土宗の発展版ととらえると分かりやすいでしょう。「浄土宗は、念仏を唱えることこそが進行を表す証」としているのに対し、「浄土真宗では、念仏を唱えようとする気持ちが大切」であることに重きをおいています。浄土真宗が浄土宗と違う点は、極楽浄土への往生のためには念仏を唱えることが必須の条件にはなっていないところです。浄土宗が念仏を唱えることによって往生できるという考えをひといき超え、浄土真宗はさらに、念仏を唱えて信じているならば、その心が信仰心につながると説いています。さらに、念仏を唱えようとする気持ちだけでなく、日々の感謝の気持ちは口に出すべきとしています。

●掛け軸の違い

2つの宗派の違いは、掛け軸にも現れています。それぞれ以下のような配置でかけられます。

  真ん中
浄土宗 法然上人 阿弥陀如来 善導大師
浄土真宗 親鸞聖人 阿弥陀如来 蓮如上人

●自由度の違い

また、2つの宗派は自由度も大きく異なります。浄土宗は昔ながら規律の厳しい宗派で、僧侶は坊主で結婚をしない、肉も食べないという禁欲の毎日を送るのが一般的でした。その一方で、浄土真宗では普通の髪型をし、結婚をする僧侶が多くいました。これは、親鸞聖人が「すべての人が差別なく本当の仏教というものを伝えたかったため」であるとされています。現在では、僧侶が肉や魚を食べたり結婚したりするのは一般的ですが、親鸞聖人がその行為を行うまでは、タブーとされる風潮があったようです。

 

浄土真宗のお葬式の特徴

浄土真宗の自由度の高さは、お葬式にも現れています。どのような特徴があるのか見てみましょう。

●「般若心経」を読まない

浄土真宗のお葬式で最も特徴的なのは、般若心経を読まないところです。般若心経は、仏の智慧(ちえ)を完成させることを目的に称えるものです。浄土真宗では、読経する努力によって報いを得るのではなく、阿弥陀如来のお力に一切をゆだねることで救われるという考え方があるため、あえて読経する必要がないとされています。

●「冥福を祈る」「安らかに」という言葉は使わない

浄土真宗では、念仏を唱えた人は往生できるという考えが元になっています。そのため、あえて死後に冥福を祈るひつようはないため、冥福を祈るという言葉は失礼に値します。言葉を添える場合は、「謹んで哀悼の意を表します」という表現を使いましょう。

●不祝儀袋は「御霊前」ではなく「御仏前」

浄土真宗のお葬式ではまた、不祝儀袋に記載する言葉にも気をつける必要があります。他の宗派の場合、人が亡くなった場合は四十九日の間は霊であり、四十九日の法要で初めて仏となる考えがあります。しかし、浄土真宗ではなくなった瞬間から仏の元へ行くとされているため、御仏前が正しい記載方法です。

●香は押しいただかない、線香は立てない

浄土真宗のお葬式では、香を額に近づける作法は行いません(香を押しいただきません)。香を指でつまんだら、そのまま香炉へ移動させます。また、線香の場合は2~3本に折り、横に寝かせましょう。
他にも細かい違いはありますが、上については代表的な違いです。浄土真宗のお葬式に参列する機会のために、覚えておくと良いでしょう。

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